学生のみなさんへ


 私たちの研究室では、機械工学と生物学の二つの異なる科学を融合させることで、 これまでの世の中にない新しい価値を生み出すことを目指して活動しています。

 18世紀から20世紀にかけての時代は、地球規模での工業化が推し進められた時代でした。 近代科学として何百年もの歴史を誇る数学・物理学・化学といった基礎科学をベースとして、 機械工学などに代表される応用科学を利用する手法が、人類に多大な貢献をしてきました。 車・飛行機・生産用機械あるいはロボットなどが「モノ」としての成果であり、これによって生み出された幸福が、 創出された豊かさだといえます。21世紀の現在、このような流れに二つの大きな変化が起こり始めています。

 一つ目の変化は、生物学、生命科学の革新的な進歩です。 分子生物学に代表される学問が、これまであまりにも複雑で取り扱いが困難であった生命の謎に対して科学的に立ち向かう重要な手法を提供しています。 その結果、生物の持つ特殊な機能を応用し、あるいは逆に工業化の流れで高度に洗練されてきた機械工学の成果を、医学など生き物を扱う分野において展開して、 これまで実現できなかったより高い次元での豊かさを追求することが、理論的には可能となってきました。

 二つ目の変化は、科学技術の地球規模での拡散と、破滅的競争のはじまりです。 科学技術の利用が人々を幸せにする力を持っていることが、多くの国々によって支持された結果、特定の選ばれた地域や人間に限定されず、 万人が技術を応用できる世界へと近づきつつあります。しかしこのことを産業競争の観点からみると、競争相手を増やすこととなり、パイの奪い合いに陥る危険をはらむことになります。 従来的な発想や手法にのみこだわり続けることが、このような危険を増幅してしまうと考えられます。

 私たちは研究活動を、生物学、生命科学における革新的な進歩を、独自の機械工学的な視点で捉えることから始めます。 そして、来世紀につながる夢を想像し、それを具体的に実現するために必要となる新しい科学や技術的ニーズを見出すことによって、研究テーマを浮かび上がらせます。 私たちの生活を豊かで幸せなものにしていくための、まったく新しい座標軸を作り出すことを目指しています。

 このような取り組みを俯瞰的に眺めてみることで、次の3つの研究モチベーションが浮かび上がってきました。

  • バイオアクチュエータ
  •  生物の筋細胞を部品として利用した、生命機械システムの構築を目指します。生きた組織を内包したロボットの実証、その制御に必要な技術の開発など、未来志向の強い方向性です。

  • バイオ操作
  •  主に流体力学や制御工学を応用し、単一細胞や細胞集団のハンドリングを実現しようとする方向性です。 対象とする試料が小さくて柔らかいことが、従来の産業機械の延長線上では取り扱えない難しさの背景にあります。細胞工学・組織工学の発展に伴い、喫緊の課題となっています。

  • バイオセンシング
  •  生物の機能を利用した新規の計測アーキテクチャ提案や、逆に生物学・医学の領域で必要とされる計測を、機械工学を駆使して実現するような方向です。 我々が学んできた「4力」というものの見方を最大限に発揮して取り組みます。

 自分自身で成長・修復する機械、忍者のように活動する昆虫サイボーグ、点描画のような手法による臓器作製など、 一見すると遊びのような、しかし人類にとって本当に必要とされる未来の夢をスタートさせます。 このような荒唐無稽な発想から生み出された、具体的な研究成果については、Researchのページを参照してみてください。

 よくある質問については、こちらまで。